東都隅田川両岸一覧
[『東都隅田川両岸一覧』は隅田川の東岸と西岸とを乾坤二巻に描き分けた、木版手彩色の巻物(または折本)である。乾巻(東巻)は、正月で凧が上がった永代橋から川を上り、深川寺町、新大橋、一ツ目弁天(江島弁天社)、回向院、人々で賑わう夏の両国橋、紅葉の中の多田薬師堂と大川橋(吾妻橋)、雪景色の千住大橋と筑波山までを写す。坤巻(西巻)は、真崎稲荷(石濱神社)付近から川を下り、今戸町、煙が上がる今戸の瓦焼き、遠景の新吉原と金龍山聖天宮、花川戸町、浅草寺、大川橋、桜の上野、雨の両国橋、新大橋、花火の上がる中洲、紅葉の永代橋と佃島、雪を被った富士で終わる。乾巻は題字2枚と絵10枚、坤巻は絵18枚と跋文2枚の内容である。全巻の版刻は関根柯影により、黒い線のみを版刻し、その上に数色の筆彩を加えたものであった。
隅田川両岸一覧の版画としては、この作品をもって嚆矢とされる。ただし、本作の基本構成は、狩野休栄筆「隅田川長流図巻」(3巻、大英博物館蔵)に依拠しており、乾巻は中巻、坤巻は上下巻を参考にしている。跋文が行書体で記された、東洋文庫本、国文学研究資料館本、大倉集古館本の系統と、楷書体で記された国立国会図書館本の二系統あり、前者のほうが初印である可能性が高いとされている。 (wikipedia・鶴岡蘆水より。)]
「東京都立中央図書館 – 隅田川両岸一覧図絵 上、 隅田川両岸一覧図絵 下」
『江戸地誌とその周辺』図録解説p.10「隅田川の東岸、西岸の風景をそれぞれ1巻ずつ絵巻物に仕立てたもの。東岸は永代橋から千住までを、西岸は橋場の真崎稲荷から高輪辺までを順に描き、四季の変化をたどる趣向になっている。後人の手になる地名の付箋がついている。 鶴岡蘆水画 天明元刊 2帖」/『江戸時代特別資料展』図録解説p.2「隅田川の左岸・右岸を眺めた状態で描き、墨摺に彩色したもの。後の浮世絵師に影響を与えたといわれる。/『江戸の夏』図録解説p.5「隅田川を描いた画は多いが、両岸の風景が展開する絵巻物形式で、版画ではこの作が初めとされる。東岸は、沢田東江の書(天明元年夏・署名)に次いで永代橋から遡り綾瀬方面に至る。西岸は真崎稲荷から下って佃島に至り、東江の跋で終わっている。見所が多いためか、西岸がやや詳しく、両岸自ら四季の変化を描き込んでいて面白い。今回は夏の部分を選び東岸の両国橋・西岸の中洲を展観に供した。中洲は安永頃開かれ、四季庵をはじめ九十余軒の茶屋ができて田沼時代には盛況を極めたが、寛政元年取払いを命ぜられた。画家鶴岡芦水は翠松斎と号し、下谷金杉に住し、文政末まで存命したという。画系等も明らかでないが、「従観之美於此巻悉収之」と跋にある通り、実写らしい迫力が感じられる。 2巻 鶴岡芦水画 天明元刊(筆彩) 2軸」/『第2回江戸資料展』図録解説p.26「隅田川東西各岸別に川筋の景色を写生したもの。水路として利用するのみでなく、この川の風物をめでた当時の人々のふぜいがしのばれる。本来は木版単色のものであるが、これは後人が筆彩し、地名等を付している。」/『古書錦絵展』図録解説p.13「鳥瞰式図法を用いた最初の絵で、後の浮世絵師たちに大きな影響を与えた。隅田川両岸の版画としては最初である。」 (「資料解説」より)
下画面は「東京都立中央図書館 – 隅田川両岸一覧図絵 上、 隅田川両岸一覧図絵 下」から切り取りをして、再接合しています。東岸と西岸の縮尺はかなり違いがあります。スクロールしてご覧ください。
隅田川東岸(千住大橋から永代橋まで。)
隅田川西岸(高輪辺から真崎稲荷まで。)