伊藤若冲筆・木拓帖「玄圃瑤華」

「玄圃瑤華」の「玄圃」は仙人の居どころ、「瑤華」は玉のように美しい花の意味。拓本のように紙の表側から墨を打って形を出す伊藤若冲が得意とした版画技法で、草花や虫、野菜などが描かれます。白と黒の劇的なコントラストと大胆な構図が見どころ。若冲53歳の時の作品です。
 白と黒だけで、さまざまな草花、野菜、昆虫などが描かれています。作者は伊藤若冲。江戸時代中期(18世紀頃)、京都で活躍した画家です。花や鳥を描いた色の鮮やかな絵画では知られていませんが、この作品のようなモノクロの世界にも、グラカルなセンスが光ります。この作品、「玄圃瑤華(げんぽようか)」は全部で48図あり、若冲が53歳の時の作品です。相国寺の僧、梅荘顕常(ばいそうけんじょう)らがあとがきを寄せています。この作品は「拓版画」という版画の技法の一種で作られています。白い部分は、版木では彫り込まれた凹部にあたります。そこに濡らした紙を貼り、表から墨を塗ると凹部は白く残るものです。若冲が自ら図柄を描いて版木を彫った作品と言われています。黒い墓地に白いモチーフが浮かび上がる明暗のコントラストと大胆な構図、葉っぱの虫食いの穴まで捉えた細部の表現があいまって、独特の雰囲気を醸し出す。「玄圃」は仙人の住む場所、「瑤華」は玉のように美しい花があり、まさにその言葉通り、幻想的な美しさのある作品です。  (「ColBase – 玄圃瑤華 げんぽようか」より。)

画像ダウンロード先は「ColBase – 玄圃瑤華 げんぽようか」で、画像名称は右、左と記述されています。

玄圃瑤華のうち題

庭梅・幣辛夷(にわうめ・しでこぶし)

連翹・梨(れんぎょう・なし)

藤・山躑躅(ふじ・やまつつじ)

水葵・糸瓜(みずあおい・へちま)

紫陽花・冬葵(あじさい・ふゆあおい)

石竹・梅花藻(せきちく・ばいかも)

檀特・華鬘草(だんどく・けまんそう)

向日葵・岩菲(ひまわり・がんぴ)

一茎九華・行者の水(いっけいきゅうか・ぎょうじゃのみず)

未草・鶏頭(ひつじぐさ・けいとう)

瓢箪・夾竹桃(ひょうたん・きょうちくとう)

花菖蒲・棕櫚(はなしょうぶ・しゅろ)

朝顔・未央柳(あさがお・びようやなぎ)

大豆・酔芙蓉(だいず・すいふよう)

薊・粟(あざみ・あわ)

菊・貴船菊(きく・きふねぎく)

大根・蔓茘枝(だいこん・つるれいし)

蕪・鳳仙花(かぶ・ほうせんか)

茄子・豇豆(なす・ささげ)

南瓜・浜梨(かぼちゃ・はまなし)

玉蜀黍・葵鬘(とうもろこし・あおいかづら)

酸漿・天南星(ほおづき・てんなんしょう)